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2023.05.13
相続放棄後の財産保存義務

相続放棄したのに、財産を管理し続けなければならないの?    

改正前民法940条1項は「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理をしなければならない」とされていました。

そのため、次順位の相続人がいない場合や、相続放棄をした者が相続財産を現実に占有していない場合でも、相続財産の管理を継続しなければならないのかどうか明らかではありませんでした。


民法改正によって責任が明確に                 

民法の改正によって「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」となりました。


主な改正点は

放棄の時に相続財産を現に占有している者は保存義務を負う。

相続財産が土地や建物といった不動産であれば、離れて暮らしていて不動産を現に占有していない相続人が相続放棄をしたときは、現に占有していないので、この不動産の保存義務を負わないということになります。

②管理義務から保存義務へ。

この「保存義務」については、①相続財産を滅失させ、又は損傷する行為をしてはならない+②相続財産の価値を維持するために必要な行為をしなければならないする考え方と、①の義務は負うものの、②の義務までは負わないとする考え方があります。現在、どのように考えるのか明確になっていないものの、改正前の「管理義務」と改正後の「保存義務」とで、実質的な違いはないのではないかと思われます。


※ なお、この改正民法は、2023(令和5)年4月1日施行ですので、施行日以降に相続放棄された場合に適用されます。


保存義務を免れるためには…                  

 相続放棄者が保存義務をきちんと果たさなかった場合、例えば家屋の壁や屋根が倒壊して通行人や隣人にケガをさせてしまったりした場合には、ケガをした第三者から損害賠償請求を受ける可能性がないとは言えません。

  そこで保存義務を免れるためには

     1 次順位の相続人がいる場合

   ⇒次順位の相続人に相続財産を引き継ぐ

     2 相続人全員が相続放棄をしてしまい、次順位の相続人がいない場合

    ⇒家庭裁判所で相続財産管理人を選任してもらう


 相続放棄の手続き、放棄後の手続きはどのようにしたらいいのか等ご不安な方は、お気軽にご相談ください。



  

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